食品安全を取り巻く環境
NPO法人食品安全ネットワーク 坂下 琢治
(DNV ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社)
いつも大変お世話になっております。ノルウェーのオスロに本部を置く、DNV ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社の坂下でございます。弊社は、ISOやFSSCの第三者認証機関として、監査業務や研修業務などを行っております。また、SMETA監査なども行っております。私自身は、食品業界を主としてISO 9001監査も担当していますが、やはりISO 22000とFSSC 22000監査の比率が高くなっています。最近では、弊社の海外支店と協力して、二者監査の代行やチェックリストや監査方法の見直しサポートなどを実施しております。気がつけば、ISO 22000研究会の第2回目くらいから参加させていただき、その間に3回転職し、現在に至っております。
今回は、認証という観点から食品安全を取り巻く環境について書かせていただければと考えております。
本文を書いています2022年3月27日現在、FSSC 22000の認証サイト数は2,934(食品容器なども含んでいます)、日本発の規格であるJFS-Cの認証サイト数は87サイトとなっています。FSSC 22000及びJFS-Cともに、会社での認証ではなく、サイト(工場)毎での認証であるため、一つの会社で5つの工場の認証を受けている場合は、認証サイト数は5となります。特にFSSC 22000の認証数は、若干頭打ちの感もありますが、増えています。JFS-Cは、後発であるためか、認証数はまだ二桁となっていますが、今後増えてくることが想像されます。
なぜ、FSSC 22000やJFS-Cの認証組織が増えたのかというと、取引先からの要望があり、そこにHACCPの制度化がそれに追い打ちをかけたと思います。取引先からの要望は、おそらくGFSI承認規格のいずれかの認証取得だと思います。GFSIとは、Global Food Safety Initiativeの頭文字をとったもので、各国の食の専門家や組織が集まり、食品安全を世界的に維持するためにガイダンス文書というものを作成し、その文書に基づいて規格(スキーム)の承認をしています。GFSI承認規格は、12(食品製造ではない分野も含めています)ありますが、日本では、FSSC 22000とJFS-Cが主流となっています。その理由として、①SQFやBRCは、審査できる組織や人が限定されており、企業にとって選択の幅が少ない、②FSSC 22000はISOをベースにしているため、ISO 9001やISO 14001の認証を受けている組織には取り組みやすい、③JFS-Cは、そもそも日本語で作られているので分かりやすい、の3つがあると個人的に考えています。取引先からの要望とは言え、GFSI承認規格への取り組みに消極的だった組織が、取り組むきっかけになった一つにHACCPの制度化があるでしょう。食品衛生法が改正され、HACCPシステムの導入・運用が制度化されました。これにより、それまで消極的であった組織が、GFSI承認規格の認証を受ければ、HACCP制度化にも対応できることになるため、FSSC 22000やJFS-Cに取り組むことを経営者が決めたという話を聞いたこともあります。
現在の食品安全を取り巻く環境を考えるに当たり、ポイントになってくるのが、前述のGFSIのガイダンス文書とCodexの食品衛生の一般原則が重要となってきます。後者については、そのものの名前は知らなくても、コーデックスHACCPという言葉は聞いたことがあると思います。そのコーデックスHACCPについても記述しているのがCodexの食品衛生の一般原則であり、2020年に改訂されています。前者のGFSIガイダンス文書は、世界の状況を踏まえて更新されており、現在は2020が最新となっています。GFSIガイダンス文書では、食品偽装や食品安全に重要な検査を行う検査室(内部と外部)の力量、緊急時の調達手順などが改訂の度に追加されています。その中でも、注目を浴びているのが食品安全文化かもしれません。
食品安全文化とは、「組織全体にわたって食品安全に対する考え方と行動に影響を与える価値観、信念、規範を共有すること」と定義されています。GFSIの食品安全文化に関する方針説明書(概要)に、こののような図が紹介されています。
代表的な確認事項としては、以下のようなものがあるかと思います。
- ビジョンとミッション:リーダー(経営層)は、食品安全に関与しているか?
- 人々:食品安全文化が、組織で働く人々や組織のために働く人々に浸透しているか?
- 整合性:食品安全文化の考えと実際が合致しているか(絵に描いた餅になっていないか)?
- 適応力:あらゆる変化に対してタイムリーな対応ができているか?
- 危害とリスクの認知:起こり得る危害とリスクが、人々に認識されているか?
食品安全文化は、食品衛生7Sも含めた、食品安全の確保のための基本になるものです。経営者が興味を持たず、協力もしない仕組みでは、期待した効果は得られないことが、世界的に確認され、GFSIのガイダンス文書に追加されたのかもしれません。食品安全ネットワークが提唱していた経営者の関与の必要性が再確認されたと言っても過言ではないでしょう。
これからもGFSIのガイダンス文書は改訂され、その改訂に合わせて、FSSC 22000やJFS-Cも改訂されます。食品安全への取り組みに終わりはありません。食品安全ネットワークで得られる情報は、そのための一因になります。
最後になりますが、私事ではありますが、第4期で理事を退任いたしました。理事時代、食品安全ネットワークにどれほど貢献できたのか、心配な面もありますが、短い間でしたが皆様には大変お世話になりました。これからは、個人会員として微力ながらお手伝いできることはさせていただければと考えております。
