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フーサン便り 第163号

留学生の受け入れによる労働力向上

NPO法人食品安全ネットワーク 理事  島路 幸宏
(株式会社大つる)

 

株式会社大つるの島路と申します。
2回目の巻頭言の機会をいただき有り難うございます。
まずは会社の紹介をさせていただきます。
弊社は7基の銅釜を使い、まろやかな味のこだわり和総菜を作る70年の歴史がある小さな会社です。小規模ながら大手量販店様の関西おせちや、有名割烹・旅館様、また介護施設様に幅広く製品を提供させて頂いています。銅釜の特性を生かした、ダシからこだわった無添加の煮物には評価を頂戴しています。10代・20代の若い社員が中心となり7S改善活動を行っており、快適で効率のいい職場づくりを目指しています。

今回は弊社と留学生についてお話させていただきます。
弊社は毎年年末におせちの製造があり、11月から12月は猫の手を借りたいほどの多忙を極めます。
毎年8月ぐらいから募集を始め年末に備えますが、近年募集をしてもなかなか人が集まらなくなりました。かつ面接の約束をしても8人連続して来ないという時代になってしまいました。このま
までは年末業務に支障をきたすため、思い切って近くの日本語学校に飛び込み、留学生の紹介をしていただけないかご相談させていただきました。
たまたま、1か月前に来日し、アルバイトが決まっていないネパールの留学生たちがいましたので、快く4名の方をご紹介いただきました。いままで中国やベトナムの方にはお手伝いをしていた
だいたことがありましたが、ネパールの方たちは初めてです。最初は多少のためらいがありましたが、一緒に作業をするとすぐに払拭され、大きな戦力になってくれています。
皆様はネパールと聞いてどのようなイメージを持ちますでしょうか?ネパールはインドと中国に囲まれた世界最高峰のヒマラヤ山脈の麓の国であり、首都カトマンズでは標高が1400mあり、日本の平均標高の約7.5倍になります。山岳地帯に住んでいる人達のため、性格も非常に穏やかで、素直で純粋な民族です。
弊社のおとなしい社員ともすぐに波長があい、また仕事に対して非常に貪欲で自ら進んで機械操作などにも取組んでおり、今ではなくてはならない仲間になっています。
留学生は1年半もしくは2年の期間、日本語学校に通います。1年間に何度かまとまって来日し、来日前には2か月から6か月日本語を勉強していますので、おおむね意思は通じます。中には来日してから宅急便やファーストフード、大手お弁当会社の夜勤を経験した子達もおり、また母国で大学・大学院卒業後、銀行員や教師など様々な職業を経験した人がいます。日本語学校に通う留学生は午前中に授業がある子は午後から仕事をし、午後に授業がある子は午前中仕事をします。ただし留学生なので週28時間勤務の制約があるため、それを考慮し最大限働けるようシフトを組んでいます。そして長期休暇には1日8時間勤務が許されています。彼らのほとんどが140万円ほどの渡航費および授業料などを親が払っていますので、比較的裕福な家の子達ですが、親にお金を返すために一生懸命働いてくれます。4人からスタート
した留学生ですが、すぐに友達を紹介していただき、今では20人のネパールの留学生が弊社で働いています。私の夢は、この子たちに再会するために、5年後に社員旅行でネパールに行くことです。また、日本語学校を卒業したのち、2年間の専門学校か日本の大学に進学しますが、その中から1人でも弊社に就職してくれることを願っています。
また、外国人の就職をサポートしている会社から紹介を受け、早速この春には男性1名、女性2名、計3名のネパール人の正社員採用も決めました。弊社では通訳と生産管理を担当していただき
ますが、留学生たちのリーダーとして、また良き相談相手として活躍してくれることを期待しています。
以上、弊社の新たな労働力事情をお話させていただきました。


最後になりましたが、この場をお借りし理事退任のご挨拶をさせていただきます。
2017年から5年間、理事の末席に名を連ねさせていただいたことは、私にとって本当に貴重な経験になりました。理事として何もお手伝いすることができませんでしたが、この会で学んだ7Sの精神は今後も若い社員達とともに実践してまいりたいと思います。
短い間でしたがお世話になり、ありがとうございました。

 

 

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フーサン便り 第157号

食品安全ネットワークをご活用ください

NNPO法人食品安全ネットワーク 事務局次長 青森 誠治
(SEITA食品安全コンサルティング)

 

会員の皆様、こんにちは。
 今期より事務局次長を務めております、青森誠治です。

 事務局では様々な業務を行っておりますが、私が主に担当しているのは、今皆さんに読んでいただいているフーサンだよりの編集長の業務です。

 フーサンだよりは、年間6回発行しており、今回で157号となりますが、当会のホームページにて、第19号以降は巻頭言が、2003年の第43号からは全体をご覧いただけます。
(下部に掲載した二次元バーコードを読み取るとご覧いただけます)
 振り返って読んでみると、フーサンだよりには25年間の様々な歴史が残されています。
 例えば、2000年は「何とか今後10年程度は、この会が続いて欲しいものだと期待する」という巻頭言から始まり、2001年には、HACCPだけではなく、各食品企業が強制されることなく自主性をもって食の安全をも考えた「全社的な品質」 TQM:Total Quality Management活動を行うことが一番大切だという主張が、2007年には11年目の活動に際して、ISO22000:2005の飛躍の年となるが、まだまだ課題があるということが書かれています。
 また、2015年からは角野会長へのバトンタッチ後の年頭あいさつとして、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)の改正」について触れられ、食品衛生7Sの大切さを、2016年の巻頭言では2020年にHACCPが制度化になるであろうことなどが書かれています。
 巻頭言以外にも、様々な分野の方がその時々の話題や、セミナー報告、皆さんが活躍される分野についての記事もあり、非常に勉強になります。
 最近になって当会に参加した、という会員の方は、是非過去のものもご一読ください。
 今回のフーサンだよりに、5月18日に開催される25周年の記念講演のご案内があります。
 是非ご覧いただきたいのですが、今回は小久保 彌太郎先生、湯川 剛一郎先生、豊福 肇先生という非常に豪華な3人の先生方によるご講演を予定しております。
 このような講演が開催できる団体が他にあるでしょうか?きっと他にはないと思います。
 改めて、最高顧問や会長が築いてこられた人脈の素晴らしさを感じます。

 ご存知のことと思いますが、食品安全ネットワークは、食品産業を基本に、会員間で異業種交流を深めるためのネットワークづくりを目差して設立され、以下の基本コンセプトを掲げています。

  • 食品産業の衛生・安全に関する総合シンクタンクを目差す。
  • HACCPシステムの導入、指導、教育をコンサルティングする。
  • 食品製造の衛生管理コンサルティング。
  • 会員相互の友好と親睦を図り、情報交換ネットワークづくりを行う。

 このコンセプトを会員の皆さんでどんどん活用していただきたいと思います。

 仕事柄、品質管理部門の方とお会いすることが多いのですが、よくお聞きするのは、業界の動向や、他社での取り組みなど、社外からの情報が欲しいということです。
 私自身も、会社の中にいただけでは得られなかった出会いや知識、学びの機会が沢山あり、今でも元をたどると食品安全ネットワークにつながる、という仕事が非常に多いです。

 また、今回の巻頭言もそうですが、文章を書く機会を得られたことも大きいと感じています。セミナーや研修会に参加した感想文や、学んだことの紹介というのは、参加したその時には分かったつもりでいても、後で自分の言葉で説明しようとすると難しく、整理してアウトプットする大切さを知ることができました。
 発行する書籍の一部を書いたり、雑誌に寄稿したりというのは非常に大変な作業ですが、その分成長を感じることもできます。
 フーサンだよりの編集長として、皆さんに原稿のお願いをすることもあるかと思いますが、是非ご協力いただけましたら幸いです。

 この2年間は、新型コロナウイルス感染症の流行により、当会も活動が制限されることもありましたが、一部セミナーはWeb参加とのハイフレックス形式での開催を開始しました。
 今までは現地に行くのが難しくてご参加いただけなかった方も、Web形式だと業務時間内で参加することもできますし、遠方の方でも参加しやすいというお声をいただいており、活動の幅が広くなったと言えます。

 今年は、もっとたくさんの方に活動を知っていただけるように、そして、会員になっていただくメリットが伝わりやすいように、ホームページのリニューアルや、SNSを活用した情報発信を行っていくことを予定しています。
 理事や事務局では、さらに会員の皆さんのお役に立てる活動ができるように頑張って参りますので、皆様お誘いあわせの上、どんどんご参加ください。
 また、こんな事をやって欲しい、こんな話が聴きたい、などご要望がございましたら、是非教えてください。
 今後とも食品安全ネットワークをよろしくお願い致します。

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フーサン便り 第162号

書籍「はじめての食品安全」

NPO法人 食品安全ネットワーク 理事長 角野 久史
   (株式会社角野品質管理研究所 代表取締役)

 

明けましておめでとうございます。

 新型コロナウイルス感染が発生して3年が経過してきているが、行動規制はないものの、まだ感染がおさまらない状況です。

 2021年度は新型コロナウイルス感染の影響で、予定していた取り組みのいくつかを中止せざるをえなくなりました。

 しかし、2022年度(2022年12月まで)は主な取り組みとして、「6月15日(水)~ 6月16日(木)第57回見学会と第60回企業サロン(宿泊見学会)」でキユーピー(株)とイカリ消毒(株)の見学をおこないました。「9月14日(水)には第58回見学会と第61回企業サロン」で日軽パネルシステム(株)の見学をおこないました。日軽パネルシステム(株)は食品企業ではなく、食品工場の壁や冷蔵庫のパネルを製造する工場です。

 7月13日(水)には「第13回食品衛生7S基礎講座」を開催しました。7月13日(水)には「第13回食品衛生7S基礎講座」を開催しました。

 2022年11月26日(土)には、食品の安全・安心講座(米虫塾)を、なんと第117回目を開催しました。

 残念なのは11月9日(水)開催予定の「第18回HACCPセミナー」は、参加者の応募がなく中止をせざるをえなくなったことです。2021年6月から「HACCPの制度化」が施行されたのにかかわらず、中止にせざるをえなかったことは誠に残念です。HACCPが制度化されたのにかかわらず、食品企業の動きとしてはあまりないように思われます。理由として地元の保健所が「新型コロナウイルス感染」対応で、食品企業にたいしてHACCPについての広報や働きかけができない状況にあると思われます。しかし、なんといっても我々の働きかけや広報の力不足が主な要因であります。

 代わりの企画として10月12日(水)に「食品安全基礎講座」を初めて開催しました。対象は食品企業に就職して1年から2年の従業員対象におこないました。実際に世間で起こっている食中毒事例に基づき「その原因菌」はどんなものなのか、またその食中毒の原因は、そしてその対策はこうあるべき等についてわかりやすく解説をしました。異物混入もそうである。事例に基づき原因と対策について解説をしました。そして、食中毒や異物混入を防止する土台が「食品衛生7S」であることを明確にしました。

 それを受けて、書籍「はじめての食品安全」を、2023年3月(予定)に日科技連出版社から出版することなり、今執筆中です。

 構成は

  • 第1章 食品安全の考え方
  • 第2章 食中毒事例とその原因と対策
  • 第3章 異物混入の原因とその対策
  • 第4章 誤表示事例とその対策
  • 第5章 はじめての食品安全(食品企業教育事例)

からなります。

 この本は日科技連出版社から「はじめてのHACCP」につぐ第2弾の「はじめて・・・・」として出版するものであり、第3、第4も計画をしているので、乞うご期待です。

 最後になりましたが、皆様のご多幸とご健康を心よりお祈り申し上げます。

 

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フーサン便り 第158号

食品安全を取り巻く環境

NPO法人食品安全ネットワーク 坂下 琢治
(DNV ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社)

 

いつも大変お世話になっております。ノルウェーのオスロに本部を置く、DNV ビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社の坂下でございます。弊社は、ISOやFSSCの第三者認証機関として、監査業務や研修業務などを行っております。また、SMETA監査なども行っております。私自身は、食品業界を主としてISO 9001監査も担当していますが、やはりISO 22000とFSSC 22000監査の比率が高くなっています。最近では、弊社の海外支店と協力して、二者監査の代行やチェックリストや監査方法の見直しサポートなどを実施しております。気がつけば、ISO 22000研究会の第2回目くらいから参加させていただき、その間に3回転職し、現在に至っております。

 今回は、認証という観点から食品安全を取り巻く環境について書かせていただければと考えております。

 本文を書いています2022年3月27日現在、FSSC 22000の認証サイト数は2,934(食品容器なども含んでいます)、日本発の規格であるJFS-Cの認証サイト数は87サイトとなっています。FSSC 22000及びJFS-Cともに、会社での認証ではなく、サイト(工場)毎での認証であるため、一つの会社で5つの工場の認証を受けている場合は、認証サイト数は5となります。特にFSSC 22000の認証数は、若干頭打ちの感もありますが、増えています。JFS-Cは、後発であるためか、認証数はまだ二桁となっていますが、今後増えてくることが想像されます。

 なぜ、FSSC 22000やJFS-Cの認証組織が増えたのかというと、取引先からの要望があり、そこにHACCPの制度化がそれに追い打ちをかけたと思います。取引先からの要望は、おそらくGFSI承認規格のいずれかの認証取得だと思います。GFSIとは、Global Food Safety Initiativeの頭文字をとったもので、各国の食の専門家や組織が集まり、食品安全を世界的に維持するためにガイダンス文書というものを作成し、その文書に基づいて規格(スキーム)の承認をしています。GFSI承認規格は、12(食品製造ではない分野も含めています)ありますが、日本では、FSSC 22000とJFS-Cが主流となっています。その理由として、①SQFやBRCは、審査できる組織や人が限定されており、企業にとって選択の幅が少ない、②FSSC 22000はISOをベースにしているため、ISO 9001やISO 14001の認証を受けている組織には取り組みやすい、③JFS-Cは、そもそも日本語で作られているので分かりやすい、の3つがあると個人的に考えています。取引先からの要望とは言え、GFSI承認規格への取り組みに消極的だった組織が、取り組むきっかけになった一つにHACCPの制度化があるでしょう。食品衛生法が改正され、HACCPシステムの導入・運用が制度化されました。これにより、それまで消極的であった組織が、GFSI承認規格の認証を受ければ、HACCP制度化にも対応できることになるため、FSSC 22000やJFS-Cに取り組むことを経営者が決めたという話を聞いたこともあります。

 現在の食品安全を取り巻く環境を考えるに当たり、ポイントになってくるのが、前述のGFSIのガイダンス文書とCodexの食品衛生の一般原則が重要となってきます。後者については、そのものの名前は知らなくても、コーデックスHACCPという言葉は聞いたことがあると思います。そのコーデックスHACCPについても記述しているのがCodexの食品衛生の一般原則であり、2020年に改訂されています。前者のGFSIガイダンス文書は、世界の状況を踏まえて更新されており、現在は2020が最新となっています。GFSIガイダンス文書では、食品偽装や食品安全に重要な検査を行う検査室(内部と外部)の力量、緊急時の調達手順などが改訂の度に追加されています。その中でも、注目を浴びているのが食品安全文化かもしれません。

 食品安全文化とは、「組織全体にわたって食品安全に対する考え方と行動に影響を与える価値観、信念、規範を共有すること」と定義されています。GFSIの食品安全文化に関する方針説明書(概要)に、こののような図が紹介されています。

 代表的な確認事項としては、以下のようなものがあるかと思います。

  • ビジョンとミッション:リーダー(経営層)は、食品安全に関与しているか?
  • 人々:食品安全文化が、組織で働く人々や組織のために働く人々に浸透しているか?
  • 整合性:食品安全文化の考えと実際が合致しているか(絵に描いた餅になっていないか)?
  • 適応力:あらゆる変化に対してタイムリーな対応ができているか?
  • 危害とリスクの認知:起こり得る危害とリスクが、人々に認識されているか?

 食品安全文化は、食品衛生7Sも含めた、食品安全の確保のための基本になるものです。経営者が興味を持たず、協力もしない仕組みでは、期待した効果は得られないことが、世界的に確認され、GFSIのガイダンス文書に追加されたのかもしれません。食品安全ネットワークが提唱していた経営者の関与の必要性が再確認されたと言っても過言ではないでしょう。

 これからもGFSIのガイダンス文書は改訂され、その改訂に合わせて、FSSC 22000やJFS-Cも改訂されます。食品安全への取り組みに終わりはありません。食品安全ネットワークで得られる情報は、そのための一因になります。

 最後になりますが、私事ではありますが、第4期で理事を退任いたしました。理事時代、食品安全ネットワークにどれほど貢献できたのか、心配な面もありますが、短い間でしたが皆様には大変お世話になりました。これからは、個人会員として微力ながらお手伝いできることはさせていただければと考えております。

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フーサン便り 第161号

食品工場の設計の流れとポイント

株式会社アルテ代表取締役 海原俊哉

 

食品安全ネットワーク会員の皆様、こんにちは。

 株式会社アルテ(一級建築事務所)の海原俊哉と申します。弊社2005年に大阪市北区で操業を開始しました。設計事務所設立当初は個人の住宅やマンション等住宅系を中心に設計・監理を行っていましたが、2009年より食品工場に特化した部署を作りそこからは食品工場の設計をメインに行っています。
 私が食品安全ネットワ-クに入会したのもちょうどそのころだったと思います。
 最近は食品工場の設計以外で施工会社から食品工場建設のアドバイスの依頼なども増えてきています。
 今回は食品工場を建築、設計する為の重要なポイント2つをお話ししたいと思います。
 食品工場は言うまでも無く、衛生管理が重要となります。
 設計から施工までの流れの中(下記の業務フロー)で、最も重要なものは企画と基本設計の2つです。

 図は企画から始まり工事完成までの流れを表しています。

 企画では設計に入る前の諸条件を、整理していく作業を行います。製造工程図を基に既存工場を見学し製造の流れを確認し施設の問題点等をリストアップし、新工場ではどのような形にするのが一番かをお伝えします。  また新工場で使用する生産機械のリストアップをし、新工場の平面計画に落とし込み、設備設計の資料にしていきます。
 新工場の計画地の周辺環境の調査も建物の配置を決めるうえで重要です。
 建築場所の植栽や風向き降雨量等を調べる事も大切です。
 例えば、風上に向かって原料や製品の出入り口を設けると虫や埃が風で工場内に押し込まれるといった事が起こりやすくなるので、その方向は避けるよう計画していきます。
 この様にして諸条件が揃うと基本設計を行っていきます。

 基本設計ではソーニング計画を行い、動線計画を基に平面計画(平面図)を作成します。
 ゾ-ニング計画では製造作業工程(フロ-チャ-ト)を汚染作業区域・準清潔作業区域・清潔作業区域の3つに区分します。
 製品製造作業に従事しない事務室、更衣室、休憩室などの管理室は一般区域とし製造区域完全に分離し、一般区域と製造区域との接点は作業従事者の入退室(サニタリ-ゾーン)のみのゾーニング計画とすることで一般区域からの二次汚染及び異物混入防止対策ができ入室時の衛生管理が把握できる様に計画します。
 動線計画においては製造室内の作業従事者及び原材料・製品・廃棄物の流れを計画します。各流れの重要ポイントは交差汚染による二次汚染を防止し、製造能力を高めることであり、最小動線を製造作業工程(フロ-チャ-ト)に基づき、材料や製品が一方通行で流れ、作業従事者がゾーニングを跨ぐ事無く、効率よく最短ルートとなるように計画します。

 また、清潔区域の清浄度をどの程度にするか、陽圧管理や室内温度管理をどう行うのかといった事も基本設計時に検討し、決定しなければならない事柄です。
 このように食品工場の設計は周辺環境や生産ラインを理解することが重要で、食品工場建設の経験のない業者には設計はとても難しいです。
 またコスト面でも一般の工場とは感覚がかなり違う為、設計が終り見積もりを取ると金額が全く合わず再度設計をやり直すといった事が起こりかねません。
 食品工場の建設は、一般の建設ではあまり考えない事柄が多いので食品工場の建設の経験値の高い設計事務所や施工会社に依頼することがとても重要です。

 

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フーサン便り 第160号

食品業界に関わる誇りと願い

NPO法人食品安全ネットワーク理事 猪野 祐二

食品安全ネットワーク理事の一員として名前 を連ねている猪野祐二です。

 2020年から続く、新型コロナウイルスによる人 流の停滞により、飲食業界は大変な打撃を受けています。食事をしながらの歓談の楽しさを奪われた多くの人が居たと思います。

 飲食店に行くことを制限されているうちに家食に慣れ、外食の習慣がなくなってしまうのではないかと心配していました。日本で日常的な外食の 習慣が根付いてまだ、40年にもならないと思います。私が外食企業に入った当時は、まだ「飲食業=水商売」と言われていました。堅気の仕事ではなく、大学を卒業して入る会社ではないと言われていました。

 1970年大阪万博があった年に「すかいらーく」 が誕生し、ファミリーレストランという家族で気軽に楽しめる飲食店が日本に誕生しました。私が入社したのは 1990年、3年前に出来た関西センター(西宮市鳴尾浜)の補充要員としての募集でした。入社時の社員教育で調理の基本を教わり、同時に叩き込まれた事は「我々は、水商売ではない。外食産業という新しい分野を作るのだ。」という心持、経営理念は「価値ある豊かさの創造」です。社員は出勤時、必ずスーツを着て家を出て、帰る時もコックコートからスーツに着替えて帰る事を教わりました。まず、社会人である事を教育されたのです。この考え方は、いまでも、身に沁みついていて、現職でも実践しています。そして新入社員研修では、入社するに当たり我々はお客様の命を預かる大事な仕事をしている事。厨房(調理場)は 神聖な場所である事を教育しています。教育を受けた時は、不思議に思っていた事ですが、その後いろいろな飲食店を見る事になるとスーツを着て出勤する飲食店はほとんど無く、なかにはジャージ姿で出勤しそのままスタンバイをしている店舗もあり、正直衛生面では雲泥の差が見られました。

 すかいらーくに話をもどすと、西日本の店舗に食品を供給するセントラルキッチンとして設置された関西センター内には、細菌検査を行う検査室があり、今では当たり前ですが、製造部とは独立した「グループ食品衛生センター」という品質管理の専門部門がありました。毎日の工場内の衛生点検、製品や仕掛品の細菌検査と全国にある店舗の衛生状態の確認、衛生管理に逸脱が無いかなどを確認していました。当時は1日1店舗を徹底的に精査していました。

 社員が出勤する前に店舗に着き、外観やバックヤードの施錠等を確認しながら社員の出勤を待ちます。社員が出勤したら同時に店舗内に入り、社員より早く白衣に着替え厨房の点検を開始します。前日の汚れ物やゴミが残っていないか、スタンバイ食材の日付け管理や先入れ先出しなどの確認を行います。この時重大なルール違反である室温解凍等があるとその場でセンター長である西田先生に連絡し、「警告」を発します。西田先生はご存知と思いますが、「手洗いのバイブル」「ストップ・ザ・食中毒」「経営者の為の食品衛生」など数多くの食品衛生についての書籍があり、手洗いは手を無菌にしなければならないと保健所が指示していた時代に目的を持った手洗い「目的的手洗い」を提唱し、今では当たり前になっている消毒と同時に手指の保護が重要であることを50年まえから訴えられていた先駆者であり、すこし偏屈な、とても頑固な先生です。

 店舗点検では、食材のサンプリングと同時にふき取り検査を行います。まな板や冷蔵庫の取っ手、従業員の手指など1店舗で約20検体のサンプリン と器具類の保管状況、スタンバイ時の食材の取り扱い等を確認し、昼のピークが始まると控室に入り、観察したことを書面にまとめます。サンプリングした検体を検査指示書にまとめ、検査センターにFAXし翌日実施する検査の準備を始めてもらいます。

 ピークが落ち着いたころに、店長に点検内容を伝え、改善点を伝えます。店舗の成績は細菌検査の結果を基に点数化されます。清掃等の主観的なポイントは100点満点の5点だけです。95点は細菌数や大腸菌群や黄色ブドウ球菌の検出などで計算されます。数値化する事で店舗の衛生状況を客観的に把握していました。店舗も検査員の主観ではなく何が悪かったのか、どこの洗浄が不十分だったのかが分かり、改善に取り組みやすかったと思います。 厨房内の食材の定位置管理や在庫量等は店舗開発、商品開発の段階で、既に本部で検討されていましたので、管理方法や厨房内での交差汚染が起きない様に設計されていました。ハード、ソフト両面から食品事故の防止と衛生管理について検討されていた事に先見性があり、 組織として徹底させる仕組みがあったおかげで 「外食産業」という新しい産業が産み出せたのだと思い、微力ながらその一翼を担ったことを誇りに思います。

 これからも食品を扱う全ての人が、誇りをもって毎日の業務を行い、食品事故を起こさない管理のお手伝いが出来る事を私は望んでいます。

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フーサン便り 第159号

食品安全ネットワーク創立25周年総会を終えて

NPO法人 食品安全ネットワーク 理事長 角野 久史
   (株式会社角野品質管理研究所 代表取締役)

 

「第6回NPO法人定期総会(創立25周年記念総会)と特別講演会」を2022年5月18日(水)にエル・おおさか(大阪府立労働センター)で開催しました。

 2021年度事業報告、決算報告、監査報告、2022年度事業計画、予算等の議案が参加者全員の賛成で成立しました。

 食品安全ネットワークが創立25周年を迎えました。1997年7月に大阪天保山のホテルで70数名の参加で創立総会をおこない、はや25周年を迎えました。

 この間、食品工場の見学、講演会、米虫塾、海外研修、セミナー等を数多く行ってきました。

 特に強調したいのは食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の構築、普及です。5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は日本独特の品質管理手法で多くの食品企業がおこなっています。しかし、食品衛生7Sは食品安全ネットワークで構築して、事業の中心的柱として普及をおこなってきました。

 食品衛生7S構築の経過は、私が京都生協の品質管理担当(1995年~2008年)をしているときでした。取引先メーカーが異物混入やカビ等の品質クレームが発生すると、工場調査をおこない、そのメーカーと一緒になって原因調査と再発防止策を作成して改善をおこないます。しばらくするとまた同じメーカーが異物混入等のクレームを発生するのです。

 その原因調査と対策をするために、その都度工場調査を行うのです。

 そこで、2000年前後工場調査をおこなっているときに、クレームを良く出すメーカーは、ふと「5S」ができていないことに気づいたのです。

 5Sについてコンサルティングができるように「コープ充填トーフ」の製造会社である四国化工機が5Sを実践していることを知り、勉強に行きました。

 そこで目にしたのは写真1の机の5Sです。見事なぐらい机の整理・整頓・清掃がおこなわれていて清潔な状況が躾で守られています。

写真1

 まず、5Sの品質管理が不十分なメーカーにはコンサルティングをおこなうようになりました。

 しかし、食品安全ネットワーク設立後、メンバーと論議や経験をする中で、5Sは工業の中で生まれて発展してきたものであり、目的は効率なので食品向けにアレンジする必要があるということになりました。

 そこで、2004年に食品衛生新5Sを構築して「食品衛生新5S入門」(米虫節夫編 角野久史・衣川いずみ著 日本規格協会出版)(写真2)を出版しました。

写真2

 食品衛生新5Sとは「整理・整頓・清掃(洗浄・殺菌を含む)・清潔・躾」としたのです。

 食品の安全は、機械や器具等を「ふく・はく」だけでは清潔にならないので、清掃に加えて洗浄・殺菌が必要であるとしたのです。

 この本の「はじめに」項で米虫先生は「食品衛生新5Sは、微生物レベルまで考えた清潔を作り出し、維持するための活動です。この食品衛生新5Sを行うことにより食品産業における食品衛生や食品安全を保証することができるようになり、かつ、企業におけるマネージメントシステム導入の突破口となるでしょう」と言っています。

 そして、2006年に5Sに洗浄・殺菌を加えて目的を清潔にした食品衛生7S「整理 整頓 清掃 洗浄 殺菌 躾 清潔」を発表しました。

 日科技連出版より、食の安全を究める「1.食品衛生7S(導入編)」(米虫節夫編著)」「2.食品衛生7S(洗浄・殺菌編)(米虫節夫監修・角野久史編著)」「3・食品衛生7S(実践編)(米虫節夫監修・冨島邦雄編著)」を出版しました。(2006年度日経品質管理文献賞受賞)(写真3)

写真3

 米虫先生は「シリーズ刊行にあたって」の項で「食品安全ネットワークは従来食品衛生新5Sという名称で食品企産業における5Sを多くの場所で発表してきました。著者らは、従来の工業5Sと差別化し、さらに食品産業の実態に即したしたものに特化するという観点から食品衛生新5Sを食品衛生7Sと改称してその内容を再編成した」と述べています。

 食品衛生7Sを構築、普及してきて16年です。毎年2月に行っている「食品衛生7S事例発表会」でも延べ90社の食品企業が発表してくれました。また、月刊食品工場長では「微生物レベルの清潔を目指す‐食品衛生7S」の特集を2021年の12月から連載がおこなわれています。食品衛生法改正で「HACCPに沿った衛生管理の制度化」「営業許可の見直しと営業届制度の新設」とがおこなわれて、食品企業はさらに安全なモノを製造し消費者に安心してもらえる企業にレベルアップが求められています。

 食品安全ネットワークもさらに食品衛生7Sの普及を要として、レベルアップしてさらなる25周年をめざします。そのためには、今後の食品安全ネットワークを支えてくれる若手の加入や積極的参加を期待します。

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フーサン便り 第156号

NPO法人食品安全ネットワークは創立25周年を迎える

NPO法人 食品安全ネットワーク 理事長 角野 久史
   (株式会社角野品質管理研究所 代表取締役)

 NPO法人食品安全ネットワークは今年創立25周年を迎えます。1997年7月10日に70数名の参加で創立総会をおこないました。

 時代背景は1995年に食品衛生法改正で「総合衛生管理製造過程」(日本型HACCP)が施行されました。それを機会に食品に係る研究機関や業界団体等がHACCP研究会を設立して活動をはじめました。ところが、現在どのくらいの研究会が活動しているのでしょうか。

 食品安全ネットワークは25年もの間活動し、事業を続けてきました。

 25年の活動の中で最も中心の事業は、食品衛生7Sの創設と普及です。もともと、工業分野で日本特有の品質管理手法として5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)がありました。

 5Sの目的はムダをなくす効率です。食品製造はもちろん5Sでの効率は必要です。しかし、食品は食べて健康を害する食中毒が起こることのないように、安全なモノを造ることが求められます。そこで、2004年に食品製造分野に対して「整理・整頓・清掃(洗浄・殺菌を含む)・清潔・躾」と定義して、食品衛生新5Sを提唱しました。しかし、洗浄・殺菌は安全な食品を製造するにはきわめて大事な項目であることを認識して、2006年に食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)を確立しました。そして、新5Sでは、(清潔・躾)を食品衛生7Sでは(躾・清潔)として、食品製造では目的を清潔であることを明確にしました。

 食品衛生7S実践事例発表会を2008年に第1回を開催、今年で第15回目を迎えます。この間に、延べ90社の発表があり食品衛生7Sの広がりと、実践効果が広がっています。

 食品衛生7S実践事例発表会をおこなった後、それぞれの食品企業の成果は、日科技連出版社及び鶏卵肉情報センターより「食品衛生7S活用事例集」として出版しました。

 米虫塾(食品の安全・安心講座)は2003年「ISO22000研究会」としてはじまり、時の食品に関する法律や話題等を外部講師招いて行っています。なんと、111回を迎え、まだまだ続きます。

 また、工場見学会を57回行い、延べ見学企業が83社になっています。

 海外研修も18回行い、14カ国、見学企業は約90社になります。

 セミナーも「食品衛生7S基礎講座」「HACCPセミナー」等数多く行っていました。

昨年「HACCP制度化」が本格的に施行されました。しかし、コロナ過にあって、保健所行政が多忙の中、充分な広報や指導ができずにいて広がっていません。

 しかし、コロナが落ち着いきたら、HACCP制度化は動いてきます。そこで、HACCPの土台である、食品衛生7Sの普及と浸透がますます求められます。

 食品安全ネットワークとしては如何に多くの食品企業、特に中小企業やホテル、飲食店等にHACCP構築を援助できるのかが求められます。

 さて、食品安全ネットワークとしてはさらに、次の25年後をみすえたとき、どう活動を広げていくかが大きな課題であります。

 まずは、人財の育成です。やや上の年配層の人財は充実しています。今後の食品安全ネットワークの持続・発展を考えると20歳代や30歳代の参加者が増えることが必要です。食品安全ネットワークの会員企業を増やすことはもちろんです。食品衛生7SやHACCP等を実践している企業や団体からの個人会員を増やすのも大切です。とくに、若手の製造現場の担当者や品質管理担当者が今後加入することを期待します。

 終わりになりましたが、2022年が皆様にとって素晴らしい年になることをお祈り申しあげます。

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